中国古典小説研究会

■2011年度関西例会■

  • 日時:2012年2月11日(土)
  • 場所:キャンパスプラザ京都 6階 龍谷大学サテライト教室

プログラム

  • 13:00 開場
  • 13:10 中川諭会長挨拶
  • 13:15 井口千雪氏 『三国志演義』の執筆プロセスについて

    『三国志演義』は『全相平話三国志』のあらすじを踏襲しており、本文には『三国志』及び裴松之注、『資治通鑑』、『資治通鑑綱目』といった歴史書が利用されている。作者はそれらの素材をどのように駆使してこの小説を執筆したのか、具体的な執筆プロセスを解明する。

  • 13:50 桜木陽子氏 『梧桐雨』雑劇の秋の季節

    唐玄宗と楊貴妃の物語を描く元雑劇、白仁甫の『梧桐雨』雑劇では、楊貴妃が亡くなる馬嵬坡の場面を、史実の夏六月ではなく、晩秋の出来事として描いている。また同時代の『天宝遺事諸宮調』や、関漢卿『唐明皇哭香囊』雜劇(残雑劇)でも、馬嵬坡の場面を晩秋で描いている。これらのことを中心にして、『梧桐雨』雑劇の季節描写の特徴や、元代前期の作家の作品における、楊貴妃の物語で描かれる季節描写について検討したい。

  • 14:25 Tea Time
  • 14:40 小松謙氏 演劇と小説の関係について

    同一の題材を扱った演劇と小説の関係について総論的に述べるとともに、具体的に演劇作品の中に『三国志演義』の古い形態が保存されていると思われる事例を指摘することにより、演劇作品を通して小説の成立過程を検証しうる可能性について論じる。

  • 15:15 二階堂善弘氏 【関西企画】古典戯曲小説のデータ利用について

    人文学における情報化は近年ますます進み、データベースは質量ともに増加してきた。戯曲・小説分野においても、多くのデータが利用できるようになっている。しかし、例えば基本的な古典文献を網羅的に集めた『中国基本古籍庫』も、利用できる研究機関は限られている。ここでは『基本古籍庫』などを中心に、古典データベースの利用と問題点について簡単に紹介したい。

  • 15:50 参加者自己紹介 のちTea time
  • 16:15 フロアディスカッション
  • 17:00 終了
  • 17:20 懇親会

■2011年度関東例会■

  • 日時:2011年5月14日(土) 15:00~
  • 場所:神奈川大学 横浜キャンパス 20号館417-A
  • 上原究一氏(東京大学大学院) 周曰校萬巻樓と唐氏世徳堂の小説出版活動、並びにその覆刻および後印の 状況について

    発表者は以前、四本が現存する『西遊記』の「万暦20年金陵世徳堂刊本」とされる版本のうち、三本は建陽の熊雲濱による覆刻本であることを確認し、その特徴を論じたことがある(世徳堂本『西遊記』版本問題の再検討初探――他の世徳堂刊本小説・戯曲との版式の比較を中心に――」、『東京大学中国語中国文学研究室紀要第』12号、1~28頁、2009年10月、電子版のみ発行
    このたび中国国家漢辨の援助により2011年2月1日から3月31日まで北京大学国際漢学家研修基地の訪問研究員として北京に滞在する機会に恵まれ、その間の調査で世徳堂本『西遊記』とほぼ同時期に金陵で刊行された周曰校乙本『三国演義』(万暦19年刊)・周曰校萬巻樓本『大宋中興通俗演義』(刊年未詳)・世徳堂本『南北宋志傳題評』(万暦21年序)の三種についても、それぞれ原刊本と思われる伝本の他に、それにそっくりな覆刻本も存在することが分かった。本発表では、従来の小説書目各種や各作品の先行研究では見落とされたり誤解されていたりしていたそれぞれの書誌情報を整理した上で、これら諸覆刻本に共通の特徴について論じ、当時の小説の出版や伝播の状況の一端を明らかにしたい。
    また、上記の前論でも簡単に触れたが、この時期に世徳堂が刊行した小説の一部は後に金陵周氏大業堂の手によって同じ版木で後印されており、この具体例についても紹介する。
    更に、先行研究で未だ定説を得ない周曰校本『三国演義』や萬巻樓本『大宋中興通俗演義』の版心に見える「仁壽堂」と周曰校の関係や、同じく世徳堂本『西遊記』や同『南北宋志傳題評』の序に名の見える「唐光禄」が誰なのかについても些かの発見があり、それに伴って新たな疑問も生じたので、併せて報告して御指正を賜りたい。