■2013年度大会■
- 日時:2013年9月3日(火)14:00受付開始 ~ 9月4日(水)15:30 解散予定
- 場所:ホテル京都エミナース
プログラム
9月3日(火):研究報告(1)
- 14:30
『三国志演義』の諸版本を比較すると、周知のように、その回目(章題)は諸本間で異同が見られる。対句に改変した毛本を除けば、その差異は微少と言ってよいが、その微少な差異に何らかの「意味」を見出せるように思われる。一方、ある版本の内部において、本文と目録の回目が一致しないという現象もしばしば見出せる。これは無論、編集の杜撰が主たる原因ではあろうが、そう豫測がつくゆえに、これまで詳細に検討されていないことも確かである。本発表では、版本間および同一版本内の回目の不一致を網羅的に整理し、それを意味づけることを試みる。
『三国志演義』の本文と目録―編集過程について考えてみる―
- 15:15
かつて私は拙稿「中世禅林における『新刊全相平話前漢書続集』の受容―清家文庫所蔵『漢書抄』への引用をめぐって―」(2011年)において、清原宣賢の筆写に係る『漢書抄』のうちの帝紀の抄中に『新刊全相平話前漢書続集』が引用されることを報告した。今回は『全漢志伝』が宣賢の抄『蒙求聴塵』に引用されることを報告し、旧稿の内容に若干の訂補をなすことを試みたい。
中世における中国通俗小説受容についての一報告
- 16:00 研究報告(1)ディスカッション
- 18:00 懇親会
9月4日(水)
- 09:00 総会
- 09:30 海外学会参加報告
研究報告(2)
- 10:00
「石鼎聯句詩序」は、謎の道士「軒轅弥明」と、劉師服・侯喜という韓愈の友人らが「石鼎」について詠んだ「石鼎聯句詩」に韓愈が付した序文で、『太平広記』が引く『仙伝拾遺』には「軒轅弥明」という題で収められている。このことからも分かるように、その内容は極めて小説的である。本発表では、この作品を、韓愈が自身を作中人物として描いた他の作品と比較することによって、韓愈の自己表現、自己認識の特徴を探りたい。
『石鼎聯句詩序』における韓愈の自己表現の特徴
- 10:45
『水滸伝』において好漢が梁山泊に加わった経緯を探ると、秦明や朱仝のように、家族などを殺されたうえに居場所も失って落草するほかなくなった例が見られる。このように「家族の命を代償にして梁山泊に加入」する好漢は他にも存在する。その源流は秘密結社の入団事情に求められるだろうが、小説作品では大きく変容して表れている。本発表では、好漢の梁山泊加入とその家族の死との関係を手掛かりにして、『水滸伝』成立の白話小説史における意義の一端を考察してみたい。
家族殺しの系譜――『水滸伝』成立に関する一試論
- 11:30 昼食休憩
- 13:00
仏教が中国社会で広範に信仰されるようになると、中国文学の作品においても僧尼に関する記述が豊富に含まれることとなった。明清時期に至ると、文学作品、とりわけ小説では、僧尼のイメージは常に性と関係づけられるようになった。その一つに『灯草和尚伝』がある。『灯草和尚伝』は、僧尼を扱う明末清初の艶情小説の一つである。主人公の灯草和尚は、幻術と仏教の神通力などの要素を持ち備えて、体の大きさを自在に変化できると描写されている。ここでの和尚像は、他の公案小説や笑話などに描かれる形象とは大きく異なる。本発表では、『灯草和尚伝』の和尚像に着目して、他の艶情小説や、公案小説、笑話などに描かれる和尚像との比較を通して、『灯草和尚伝』の和尚像に見られる表現的特徴を明らかにする。そして、そのように描かれた社会的背景を考えてみたい。
明清小説における和尚像の変遷―『灯草和尚伝』を中心に―
- 13:45
清朝宮廷にて上演されていた「薛家将」物語の劇本を検討すると、明伝奇『金貂記』を元にしつつ「丙子之役」を受け改編したと推測されるものが七種類あった。これらは清乾隆期に刊行された『説唐後伝』などの小説より成立が古いと考えられるが、小説に取り込まれたのはこれとは別系統の内容を持つ戯曲群であり、「薛家将」物語の主流とは成りえなかった。七種類の劇本の実態と、それらが主流になれなかった事情について検討したことを述べたい。
清代宮廷演劇における「薛丁山物語」の分岐と変遷―明万暦伝奇『金貂記』を元とする戯曲群について―
- 14:30 研究報告(2)ディスカッション
- 15:30 終了
■2013年度関西例会■
- 日時:2014年2月9日(日曜日)午後1時~
- 場所:キャンパスプラザ京都 6階 龍谷大学サテライト教室
プログラム/司会:林雅清(京都文教短期大学)
- 13:00 開場
- 13:10 会長挨拶
- 13:15
清末民初の湖南地域で隆盛した湖南説唱本は、実際に上演される背景をもちながら、読み物として出版されたものである。物語の種類は伝統的なものや湖南独自のものもある。本発表では、湖南地域で流行した「私訪」故事、「美圖」故事や、その他『秦雪梅三元記』『王月英買胭脂』『藍橋会』の故事を中心に、テキストに見られる販促の意識や、実際の上演と出版との関係を通して、地域での流行を築くメカニズムについて検討する。また地域限定的出版から上海で石印出版される過程での変遷についても併せて考察したい。
湖南説唱本から見る清末民初説唱本の商業モデル
- 13:55
江戸時代の日本人は、中国白話文学を日本語に訳しただけでなく、日本語で書かれた作品の白話訳や、白話による作文も試みている。これらは、中国語の口語体資料として捉える場合には問題があると指摘されることもあったが、白話が中国語圏の外でどのように用いられたかを端的に示す言語文化史資料だと言えるだろう。『仮名手本忠臣蔵』の白話訳は、その一例であり、誤訳や誤用も含めて日本における白話使用の状況を示している。本発表は、これまで取り上げられてきた『仮名手本忠臣蔵』の漢語訳をめぐる問題を整理しなおして提示することを主としており、日本人の白話による翻訳と創作の一端を紹介するものである。
近世日本における日本文学の漢訳と白話受容―『仮名手本忠臣蔵』の漢訳を中心に―
- 14:35
宝巻を語りうたう「宣巻」が、中国のいくつかの地域で現在も行われ、紹興がそのひとつであること、すでに磯部祐子先生をはじめとする調査・研究によって、知られていることであろう。この発表は、紹興郊外の安昌鎮大和郷で2013年11月に行った『太平宝巻』の宣巻調査にもとづき、映像を紹介しながら、宣巻のもつ意味と宝巻テキストの読み解きについて考えようとするものである。
紹興宣巻の上演・テキスト・信仰―『太平宝巻』の例―
- 15:15 Tea Time
- 15:30 来場者自己紹介
- 15:45 関西企画 白話小説研究の軌跡と展望
本年3月にご退職される大塚秀高先生(埼玉大学)をお迎えし、ご自身のこれまでのご研究やご経験についてお話しいただきながら、白話小説研究が歩んできた道のりをふり返りたいと思います。
- 16:45 フロアディスカッション
- 17:40 閉会
- ※プログラム終了後、懇親会
■2013年度関東例会■
- 日時:2013年12月14日(土) 14:00-17:20
- 場所:二松学舎大学九段キャンパス 1号館802教室
プログラム
研究発表
- 14:00-14:50
『三国志演義』における趙雲は忠義の将としてよく知られており、特に目覚しい活躍を見せるのは、「長坂坡」の戦いである。曹操の大軍に攻め寄せられた劉備は当陽の長坂坡で追いつかれ、混乱の中妻子は戦場に取り残されてしまう。趙雲は一人で戦場を駆け回り、甘夫人を救出し、そして阿斗を救出する。ところが『三国志演義』の一部の版本の「長坂坡」で、趙雲は「不忠」という汚名を着せられている。この違和感のある一文は何故あるのか。ここでは、『三国志演義』の諸版本、『三国志平話』や明代の回想録、小説を比較検討し、「長坂坡」の趙雲像を見ていきたいと思う。
「不忠」の汚名を着せられた趙雲
- 14:50-15:40
蘇庵主人『帰蓮夢』は清初の通俗白話小説であり、物語の中では民間宗教「白蓮教」の創唱とその反乱が描かれる。本発表では同名の民間秘密宗教である史実上の白蓮教との比較を通じてこの虚構の「白蓮教」の性質を明らかにするとともに、小説中における「白蓮教」の意義づけを追究したい。具体的には『帰蓮夢』のテキスト考証・あらすじ紹介のうえ、「白蓮教」の宗教的内容すなわち教理や方術、そして社会的意義すなわち貧民救済や豪傑との交わりの二つの側面に分けて考察する。
蘇庵主人『帰蓮夢』の「白蓮教」と女性描写