■2020年度大会■
2020年度大会は、新型コロナウィルス流行に伴い、Zoomを用いてWeb上で開催いたします。
- 日時:2020年12月13日(日) 10:20~17:40(終了予定)
- 開催方法:zoomによるオンライン開催(アクセス方法に関しては別途送信しましたメールによる案内をご参照ください)
●[午前]10:20~11:30
★10:20 開会
- 10:30~11:30
明清時代に盛んに出版されていた『西廂記』は、ほとんど話本小説『銭塘夢』を付録として収めた。一方、『銭塘夢』は、宋の話本とされていたものの、そのテキストが明清『西廂記』刊本でしか見られないのである。二つの物語の間に関係があるのか、あるとしたら何の関係にあるのか、それに関して各説まちまちである。本発表では、銭塘夢物語に関する絵画・磁器画などの図像を参照しながら、そのテキストの成立過程を解明する試みである。『銭塘夢』は、「司馬槱遇蘇小小」の多くの物語に共通している典型的な人と鬼の恋愛譚から「美人自薦被拒絶」のストーリーに移り変わりつつあって、宋元を経て成立したものであると考えられる。その最終的な成立は、『西廂記』およびその原型となった唐の伝奇小説『会真記』と強く関係している。そして、本発表で『西廂記』によく付いている「西湖図景」の大型版画は、銭塘夢物語(主人公・蘇小小のお墓)に関与した可能性があることをも指摘したい。
話本小説『銭塘夢』について―西廂記物語とのかかわり―
[お昼休み]
●[午後]12:30~17:40
- 12:30~13:30
『後紅楼夢 』は最も早く現われた『紅楼夢 』の続書である。『紅楼夢』は抄本の流布する時期にすでに人口に膾炙していたが、『紅楼夢』は真に広く読まれてまた後世の文学に大きな影響を及ぼしたのは、乾隆56年(1791年)に『紅楼夢』程甲本が出版された以降のことである。『紅楼夢』が広く流行しはじめた乾隆末年から嘉慶・道光年間には、この時期の中国の通俗文学の創作も出版も非常に盛んであり、夥しい『紅楼夢』続書の出現は間違いなくこの時期に非常に特色的な現象である。清代の『紅楼夢』続書は、女性描写への傾注を特徴として、男女主人公の姻縁が家族の興隆と栄達に密接にかかわることを表す貴族家庭小説群である。『後紅楼夢』は最も早い続書として、それが切り開いた「還魂」「補恨」及び賈家の再興等の設計や構想が、その後の続書に対する影響が非常に大きい。本発表では作中の林黛玉の女性描写を中心に、女性と姻縁、家族をめぐる貴族家庭の描写や創作の中で、『後紅楼夢』が原著と異なる新たな展開及び家庭小説としての独自的意義について検討していきたい。
『後紅楼夢』の構想と貴族家庭――林黛玉の女性描写を中心として
- 13:45~14:45
雑劇「楚昭王疎者下船」は、元刊本が残されており、これと明代のテキスト(タイトルは「楚昭公疎下船」)は内容が大きく異なること、特に結末が悲劇からハッピーエンドへと変更されていることがすでに指摘されている。この改変の要因は、現存する2つの明代のテキストが宮廷での上演を目的として作成されたテキストに基づくことから、宮廷での上演にふさわしい内容に改めたためと考えられている。本発表では、明代に宮廷で上演されていたと考えられる歴史を題材とした雑劇の中には『全相平話』と内容が共通し、深い関係にあると考えられているものが複数あることから、「楚昭王疎者下船」改変の過程を『全相平話』またはそれに類する民間伝承との関係から考察する。
雑劇「楚昭王疎者下船」改変の過程:『全相平話』に類する民間伝承からのアプローチ
- 15:00~16:00
明代小説「牡丹灯記」は江戸文芸に深い影響を与えた。1822年出版の柳亭種彦『浮世一休廓問答』は、15世紀後半から広く伝わる一休の物語を利用しつつ、「牡丹灯記」の要素をも取り込み、世情に適合し、怪談の色彩を帯びた作品となっている。
先行作品の利用について見ると、『浮世一休廓問答』の後半は、「牡丹灯記」及びその影響を受けた山東京伝『浮牡丹全傳』に見える、人間と幽魂との遭遇、妖怪が髑髏に変貌するくだりなどに倣っている。また、歌舞伎『阿國御前化粧鏡』の、行灯の中から幽霊が浮かび上がる場面を参考にしていることもわかる。また、『浮世一休廓問答』は人物設定、小道具、挿絵などに、一休禅師の伝説を連想させる要素を多く取り込んでいる。種彦が日中双方の様々な先行作品を活用し、虚実入り混じった、読者の興味をそそる作品を作り上げたことが知れる。
なお、読本『本朝醉菩提全傳』、合巻『假名反古一休草紙』と比較しても、従来の一休禅師とは異なる新たなキャラクターを作り上げ、一休禅師と地獄太夫との因縁を改作するなど、『浮世一休廓問答』は明らかに異なっている。短いながらも整った構成を有し、エピソードは緊密に関連し合っており、一休を扱った文芸作品の中でも注目に値する存在であると言えよう。
『牡丹灯記』と一休説話の融合――柳亭種彦『浮世一休花街問答』について
- 16:15~17:15
『水滸伝』の研究はいままでにいろんな方面からなされてきたが、物語の全体構成についてはそれほどすすんでいない。明末清初に金聖歎が七十回本をつくって以来、梁山泊大聚義(百八人勢揃い)をもって物語の分水嶺とする見方が一般となり、暗黙の了解となって話がすすめられていたからである。本論では、まず金聖歎の七十回本が初期の『水滸伝』研究におよぼした影響について述べたあと、構成研究の画期である毛沢東の水滸批判について触れ、最後に出版物としての体裁という観点から百回本『水滸伝』が二十回づつの五段より構成されることを示す。
百回本水滸伝の構成
★17:20~17:40 中国古典小説研究会総会
(研究発表はいずれも質疑応答15分程度を含みます)