中国古典小説研究会

■2021年度大会■

2021年度大会は、新型コロナウィルス流行に伴い、Zoomを用いてWeb上で開催いたします。

  • 日時:2021年12月12日(日) 13:00~16:50(終了予定)
  • 開催方法:zoomによるオンライン開催(アクセス方法に関しては別途送信しましたメールによる案内をご参照ください)

プログラム

13:00-13:20 開会(総会)

研究発表

  1. 13:30-14:30  小山瞳[関西大学大学院] 唐代文言説話にみられる虎の擬人化について

    虎は中国を代表する動物であり、『太平広記』を中心とする文言説話集にも多数の虎説話が収録されている。それら虎説話を詳しく見てみると、六朝期には虎の駆除譚や虎の変身譚が中心で、人間に親しむ虎のイメージはまだ構築されていなかった。ところが、唐代以降、もの言う虎(巻一〇九「釈智聡」(出『唐高僧伝』))や人間に恩返しする虎(巻四三二「張魚船」(出『広異記』))、山魈に支配される虎(巻四二八「斑子」(出『広異記』)ほか)など、六朝期の虎説話には見られなかった、擬人化された虎が登場するようになる。これらの虎は人間以上に人間らしく、人間を襲う猛獣としての虎や毛皮や漢方薬の材料としての虎などの、いわば現実の虎像からは乖離している。これら唐代文言説話における擬人化された虎のイメージは、唐代中期以降の小説の興隆と口承文芸の発達など、数々の要因が重なって構築されたと言えるのではないだろうか。

  2. 14:40-15:40  上原究一[東京大学]  『水滸伝』諸版本の挿画について:容与堂刊本を中心に

    『水滸伝』の版本研究には百年来の積み重ねがあり、近年の研究の進展もあって、諸版本間における本文の継承関係はかなりの程度解明されてきた。その流れを承けて、明末清初の諸版本に附された挿画についても俯瞰的な系統分類を試みたのが、鄧雷「全图式《水浒传》插图的分类及源流考」(『明清小説研究』2020年第2期)である。
    本発表では、この鄧氏論文やそれ以前の先行研究における成果を踏まえつつ、『三国演義』や『西遊記』など同時期の他の小説版本に附された挿画の特徴や変遷との比較という視点も採り入れて、明末清初の『水滸伝』諸版本に附された挿画の特徴の考察を試みる。
    その中でも今回は、上図下文以外の形式の『水滸伝』挿画としては現存最古のものである容与堂刊本の挿画を考察の中心とする。この挿画がそれ以前の主な小説挿画と比べて格段に強く本文の描写を意識しながら描かれていることを確認した上で、その背景を考えてみたい。

  3. 15:50-16:50  中塚亮[愛知淑徳大学等非常勤講師] 『封神演義』の戦後日本における受容について

    『封神演義』の戦後日本における受容について考えるとき、それ自体が獲得した読者層の広さから言っても、藤崎竜の漫画『封神演義』など、その影響下にある作品の登場を準備したという意味でも、安能務の編訳がひとつの大きな転換点となったことは間違いない。その結果、安能訳という独自の設定・解釈が多数見られるフィルターを通して受容されたことで、『封神演義』はSF的要素を備えたファンタジー作品ととらえられるなど、原作からいささかずれた形で理解されることとなった。だが、安能訳の登場以前においても、白井鐵造の歌舞伎作品『妲己』などの『封神演義』を題材とした作品は存在していた。その時、『封神演義』はどのような作品として受け止められていたのか。本発表では、これまであまり注目されてこなかった安能訳登場以前の日本における『封神演義』の受容状況について整理・紹介するとともに、安能務訳の特徴についても、いまいちど考えてみたい。

(研究発表はいずれも質疑応答15分程度を含みます)